赤い命の花。 香織のラブ・ソング#2

香織 56歳
専業主婦
好きな花:ピンク色の薔薇


心の重しが無くなった今、

気持ちが

楽になるのではと思いましたが

心はさらに重たくなり、

泥水を含んだ綿が

胸にぎっしり

詰まっている感じでした。

もっと

してあげられることが

あったのでは?

他の人なら

もっと明るく
出来たんじゃないか?

もっと優しく
してあげれば良かった。

他の人なら
出来たんじゃないか?

出来なかった私の心は汚く、

人間として

最低なのではないか。

自分を

責めるような言葉しか

出てきませんでした。
 

鬱という診断でした。


夫が赴任先から戻り、

通院生活が始まりました。

夫は、

優しく接してくれましたが

私の心は乾ききって

粉々になってしまっていました。

御飯を食べても、

砂を噛んでいるようで。

テレビを見ていても、

画面の中の人々の笑顔は

私には遠い世界に思えましたし

旅行に行っても、

心から寛ぎ
楽しむことはなく。。。

月日は流れ…

暖かくなってきたので、

庭の花を

植え替えようと

夫が提案してくれました。

夫が選んでくれたのは、

柔らかく

深みのある

赤い花でした。

穏やかで温かい

空気が

止まりかけた私の

心臓を

優しく押してくれました。

花を

静かに見つめていると、

生きる力を

わけてくれている気がします。

毎日見つめています。
 

今日も

なんとか一日が終わります。

明日も

この花と一緒に、

穏やかな一日を過ごしたいです。

その花は、

一年草でしたが

三年も咲き続けてくれました。