見失った自分。 陽子のラブ・ソング#1

陽子 34歳
作曲家
好きな曲:Black bird


愛されたくて、、、

相手が望む自分になり。

優しくされたくて、、、

相手のわがままを受け入れ。

守られたくて、、、

相手に尽くした。

自分を失っていることにも気づかず。

自分の心を傷つけているともわからず。

やっと気づいた時、

そこは、光がない草も生えない

どこまでも続く黒い砂漠だった。

深く重い哀しみを手離せないまま、

ひとり暗闇の中でうずくまり

行き場のない思いが、心と体を固く小さくした。

このままもう燃え尽きて、

登っていけたなら、、、どれだけ楽だろう。

存在が、消え失せようとする寸前

心が最後に求めたのは、音楽だった。

重たい鎖に繋がった心が、

重低音のリズムと共鳴したとき、

わかってるよ、と誰かが言った。

今にも止まりそうな胸を

生きろ、と叩き続けてくれた。

自分を癒すために自分で。

自分のために自分が。

力なげな指先を、わずかに震わせると

優しくスローな音色が流れ出た。