美花 22歳
介護施設でアルバイト
好きな童話：人魚姫
私の母は、
昔から体が弱くて。
だから、
小学生の頃から
母のかわりに
家事をこなしてきたの。
病院通いにも付き添って。
だからかな、
みんながアニメの話で
盛り上がっているときも
受験勉強で
必死になっているときも
恋にときめいて
張ちきれそうになっているときも
なんだか
心から楽しめなくて。
自分だけが
年を取っているような気がした。
恥ずかしい
気持ちを隠しながら、
みんなの真似をして
その場を取り繕っていた。
自分よりも
母のことを
優先させてきたからかな、
自分が欲しいもの、
やりたいことが何なのか
わざわざ
考えないとわからないし、
考えてもわからなかったり。
最近、近所のおばさんが
紹介してくれた
介護施設での仕事を始めたの。
家の事もあるので
1日4時間だけ。
主な仕事は、
デイサービスで来られた
認知症のお年寄りの食事介助。
私が
担当してお世話している
お年寄りの中に、
笑顔が
可愛いおばあさんがいて、
彼女の口癖が、
「わたしの孫を紹介したるわ。」
いつも、笑って
聞き流していたんだけど
ある日、
そのおばあさんが来なくなったの。
どうしたんだろうと
思ってたら、
亡くなったという知らせが入った。