闇の中で生きる日々。 香織のラブ・ソング#1

香織 56歳
専業主婦
好きな花:ピンク色の薔薇


十年間、
夫の母の介護をしてきました。

一月のある夜、
母は静かに息を引き取りました。

あまり思い出したくはないのですが…

思い返してみると

母との永い介護生活は

深く重い経験の連続でした。

仲良く会話が弾むときは

心が通じ合えて

一緒に

楽しく童謡を歌う

和やかな

時間もありましたが

突然、

機嫌が悪くなることが

常で、

そうなると手をつけられなくなり、

ひどい言葉で

罵られる毎日でした。

助けあうはずの夫は、

仕事で

海外に単身赴任をしていました。

孤独の中での

苦しみは

どこにも

逃げ場が無く

母の激しい言動は、

病気のせいだと
自分に言い聞かせながらも

口にすると

悪魔になってしまうような

感情が

沸き上がることも

しばしばありました。

優しく

接したい気持ちを持てば、

裏切られる、

の繰り返しに、

私の心は
段々と柔軟性がなくなり、

冷たい人間に

なっていくように感じました。

いつまで

続くんだろうか?

遠く暗い、

目を凝らしても見えない

未来に

夜空を見上げては、絶望していました。

そんな私を

助けてくれたのは、

ケアマネジャーさんと
介護ヘルパーの皆さんでした。

心の中に

とどめて置けない気持ちを

うなずきながら、

ただただ

聞いてくれました。

聞いてくれるだけで

良かったんです。

心の中の闇が薄まり

その日一日が救われました。

そして、

限界ギリギリで生きている私を

支えてくれたのは

隣に住む、マサコさんでした。

いつも優しい笑顔で

そっと見守り、

手を差し伸べてくれました。

彼女達のお陰で

最悪の道を選ばずに、
ここにいることが出来ています。

感謝の気持ちで一杯です。