海辺の時間

ふたりの旅。 麗花のラブ・ソング#5

麗花 57歳
スナック経営
好きな色:赤


香織との旅は

とても意味のあるものになった。

私たちは永い間

意味のない距離を取っていた。

それは、お互いに お互いのことを

認めたくない気持ちがあったのだと思う。

香織は、専業主婦で

ずっと夫に頼って 甘えた生き方をしていると

思っていた。

だから、好きになれなかった。

実際は違った。

家族のために、

自分の 心も体も使い切るなんて

私には出来たかしら?

家族と縁を切って 家を出た私は

家族に対して 無責任で

一人で 苦労して

生きてきたと 思ってるんだから

愚かな話よね。

香織は、優しく強い心を持ってる。

* * * *  

姉さんとの旅は、 ほんとに楽しかった。

今まで疎遠にしていた分

お互いの事を 一日中、夜遅くまで話続けた。

姉さんだけには、

自分の気持ちを ありのままに話せる。

姉さんは ひとりで自由に生きていると

思ってたけど。

実際はそうじゃなかった。

自分でお店を運営して

家族に縁のない女の子を2人も 面倒を見ていた。

姉さんらしい。

子供の頃、 いつも私のことを助けてくれてた。

姉さんは、優しくて強い。

* * * *  

麗花: 香織。ごめんなさいね。今まで。

私が、話を聞いてあげていたら

もう少し楽に生きれたような気がする。

香織: 私こそごめんなさい。

姉さんが家に戻ってこれるように

父さんを説得できれば良かった。

麗花: 有難う。 でも、私の今までの人生は

辛いことの方が多かったけど

たくさんの事を得たと思うの。

とても楽しかったわ。

香織: そうね。 色々あって辛かったけど

今は、すべての事を受け止めて

自分の中で整理することで

すべてが良い経験だと思えるようになったの。

姉さんに話すことで、

完全に、過去の事として終えることができた気がする。

麗花: あなた、昔やってた草木染を

また、始めたら?

香織: 実は、知り合いの女の子に教えるために

少し始めたところなの。

麗花: そうなの?良かった。

あなた、あれをやっていた頃が

一番あなたらしく輝いていたから。

香織: 自分でもそう思うわ。

久しぶりにやって、

こう、胸が上のほうに上がって

跳ね上がるような感じ?になったのよね。

麗花: 大好きってやつね。

私は、今までの事を文章にしてみようかと思うの。

香織: それ、いいじゃない。姉さん。

だって姉さんはいつだって本を読んでいたもの。

私の記憶では。

麗花: そうね。。。

もうしばらく、私はこの島にいるわ。

* * * *  

この暖かく、 明るい陽射しに

照らされていると

青白い肌が息を吹き返すようで。

永い間、 夜に生きてきた私には

少し立ち眩みがしそうで。

柔らかい木陰に座って

のんびりお茶を飲みながら

波の音、 風の音、 鳥の鳴き声、

遠くで交わされる 挨拶など

ぼんやりと 聞いていると

ふわっと頭に浮かんできた文字。

さらさらと書き留めていくと

ひとつの詩になった。