心が硬くなってしまった

硬く縮んだ心。 檸檬’s Song #1

檸檬 32歳
フリーのイラストレーター
好きな映画:ローマの休日



4月になって
街を歩くと、

行き交う人達、
みんながみんな

新しい生活に希望を持ち、

自信に
充ち満ちているように感じる。

勢いのある
人の流れとは

逆方向に、

隙間を探しながら
ゆっくりと歩く。

流されないように、
流されないように。

実家までの道のりは
2時間半。

いつでも
帰れる距離だけど、

もう5年近く帰っていなかった。

実家行きの
列車の席に腰を落とし、

溜め息をつく。

窓を開けると、

温かく
とろけそうな風が入ってきた。

春の風は、
車内を

爽やかな空気で
いっぱいにしながら、

硬くなった
ガサガサな心の表面を、

優しく
撫でて流れていった。

外を見つめ、再び溜め息。

好きで
始めた絵を描く仕事。

天職だと思っている。

だけど、
締め切りに合わせて、

昼も夜もなく
描き続けていると、

ホントに
好きなのか

わからなくなって、

心を
切り売りしている

気分になっていた。

ある日、
体が痛くなり動けなくなった。

病院に行っても
理由はわからず。

しばらく
実家に帰って、

これからの事を
ゆっくり考えようと思ってる。

平日の午前中、

乗客の
少ない列車に乗っていると

まるで
敗北者のような気分になり、

もう自分は
ダメな人間なんだな、

と心の中でつぶやく。
と同時に、

義務も責任もない
時間を

過ごしていることに、

ちょっとした
安堵感を覚える。

しばらくは

何もしない、
しなくていい、

そう思うと

小さく息を吸って
ゆっくり深く吐いた。

窓の外の

キラキラ
光る緑が眩しくて

目を閉じる。

心が
縮こまっているせいか、

人のいない
広い車両の隅っこで

小さくなって座っていた。

♪ キミノココロノイエスハナニ


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